研 究 年 報 - 成長科学協会

July 9, 2018 | Author: Anonymous | Category: N/A
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ISSN 0386-7617

研 究 年 報 Annual Research Reports 第33号 平成21年度 No.33, 2009

公益財団法人 成 長 科 学 協 会 THE FOUNDATION FOR GROWTH SCIENCE

研 究 年 報 第33号 平成21年度

公益財団法人 成 長 科 学 協 会

序     文  当財団は設立後33年を迎えますが、設立以来その年度に行なった研究助成 の成果を次の年度に研究年報として刊行し、全国の大学(医科大学・大学医 学部)等の図書館及び関係者に配布してきました。  その第 33 号として、平成 21 年度に行なった指定課題研究(6件)、自由課 題研究(31 件)、成育治療研究指定課題研究(2件)、ヨード欠乏症関係事業 (2件)及び国際交流研究(1件)の報告書をまとめて刊行する運びとなり ました。これらの研究成果の中に、国際的に高く評価されるものが年々増加 しつつあることは喜ばしい限りです。  また本年報には、同年度に当財団が開催した第22回公開シンポジウム「豊 かな思春期への支援」の講演要旨を収載しました。  本年報を通じて、平成21年度の当財団の研究助成関係などの活動状況を見 て頂きたいと思います。また、本年報は関係者の研究に寄与するものと考え ており、その活用を強く願っております。  尚これらの研究助成費は、平成21年度に当財団に御寄付下された各位の寄 付金によるものです。ここにそれらの方々の御厚意に対し、衷心よりお礼申 し上げる次第であります。

平成 22 年8月 公益財団法人 成長科学協会理事長 入江 實

凡   例 1. 内容は、当財団が平成 21 年度に助成した指定課題研究(6件)、自 由課題研究(31 件)、成育治療研究指定課題研究(2件)、ヨード欠 乏症関係事業(2件)、国際交流研究(1件)、計 42 件につき、それ ぞれ助成対象者より提出された報告書を収載した。 2. 報告書を収載するにあたっては、前記の5項目の記載順とした。 各項目内における記載順は、指定課題研究は当該年度の事業計画に 記載の順、自由課題研究は報告者の氏名の五十音順である。 3. 助成対象者については、指定課題研究及び自由課題研究は当財団に おいて設定した「研究助成事業に関する実施要領」に基づき、それ ぞれ公募のうえ選考したものである。

目  次

指 定 課 題 研 究 報 告 成長ホルモン療法の治療効果に及ぼす諸因子の解析並びにアドバース・イベントの調査に関する研究 …………………1 主任研究者

長谷川奉延

(慶應義塾大学医学部小児科学教室)

横谷 進

(国立成育医療研究センター内科系専門診療部)

島津 章

(国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)

田中弘之

(岡山済生会総合病院小児科)

和田尚弘

(静岡県立こども病院腎臓内科)

寺本 明

(日本医科大学脳神経外科)

永井敏郎

(獨協医科大学越谷病院小児科)

西 美和

(広島赤十字・原爆病院小児科)

羽ニ生邦彦

(羽ニ生クリニック)

堀川玲子

(国立成育医療研究センター内分泌・代謝科)

藤田敬之助

(大阪市立総合医療センター小児内科)

向井徳男

(旭川医科大学医学部小児科 現:旭川厚生病院小児科)

伊藤純子

(虎の門病院小児科)

藤枝憲二

(旭川医科大学医学部小児科)

田島敏広

(北海道大学医学部小児科)

重症成人成長ホルモン分泌不全症患者の診断、治療及び追跡調査に関する研究 ……………………………………………15 主任研究者

高野幸路

(東京大学医学部腎臓・内分泌内科)

置村康彦

(神戸女子大学家政学部)

田原重志

(日本医科大学脳神経外科)

成長ホルモン及びIGF-Ⅰ測定の標準化に関する研究 ……………………………………………………………………………23 主任研究者

島津 章

(国立病院機構京都医療センター臨床研究センター)

立花克彦

(日本ケミカルリサーチ株式会社)

勝又規行

(国立成育医療研究センター研究所)

肥塚直美

(東京女子医科大学内分泌センター内科)

横谷 進

(国立成育医療研究センター内科系専門診療部)

圭太

顧 問

(大阪大学大学院医学系研究科)

堀川玲子

(国立成育医療研究センター内分泌・代謝科)

藤枝憲二

(旭川医科大学医学部小児科)

田中敏章

(たなか成長クリニック)

ヨード摂取と妊婦及びその出生児の甲状腺機能に関する臨床的研究 …………………………………………………………25 主任研究者

布施養善

(国立成育医療研究センター研究所)

小川博康

(小川クリニック)

布施養慈

(仲町台レディースクリニック)

荒田尚子、原田正平  (国立成育医療研究センター)

低身長児の生活の質評価尺度の開発 ………………………………………………………………………………………………35 主任研究者

花木啓一

(鳥取大学医学部保健学科母性・小児家族看護学講座)

西村直子、遠藤有里、南前恵子 (鳥取大学医学部保健学科母性・小児家族看護学講座)

主任研究者

田中敏章

(たなか成長クリニック)

堀川玲子

(国立成育医療研究センター内分泌・代謝科)

有阪 治

(獨協医科大学小児科)

神闢

(鳥取大学医学部周産期・小児医学分野)



柿沼美紀

(日本獣医生命科学大学)

上村佳世子

(文京学院大学)

高橋桃子

(日本大学医学部附属板橋病院)

宮尾益知

(国立成育医療研究センター)

廣中直行

(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)

上林靖子

(中央大学)

丹羽洋子

(育児文化研究所)

長田久雄

(桜美林大学大学院)

小林 登

(譛中山科学振興財団)

自 由 課 題 研 究 報 告 ターナー症候群7例の空間認知および学習の障害と言語聴覚療法の検討 −女性ホルモン治療の検討− ………………………………………………………………………………………………………55 荒木久美子 稲田 勤

秋山成長クリニック 高知リハビリテーション学院言語療法学科

成長ホルモン遺伝子発現調節因子に関する研究−Pit-1転写活性抑制因子AESの機能解析 …………………………………71 井口元三

神戸大学医学部附属病院糖尿病内分泌内科

成長ホルモンの抗炎症作用:その分子機構と脂肪変性における役割 …………………………………………………………75 磯崎 収

東京女子医科大学内分泌疾患総合医療センター内科

吉原 愛、石垣沙織、大久保久美子、西巻桃子、野添康子、村上ひとみ 東京女子医科大学内分泌疾患総合医療センター内科

IGF-I 遺伝子 P1, P2プロモーター特異的な転写調節機構の解析 --- 特に hepatocyte Nucler Factor (HNF) の関与について--- …………………………………………………………………87 岩闢泰正

高知大学医学部門内分泌代謝・腎臓内科・保健管理センター

ソマトトロフ特異的ウイルスベクターの開発 ……………………………………………………………………………………97 岡田誠剛

関西医科大学生理学第一講座

成長ホルモンのatrogin-1遺伝子発現に及ぼす効果 ………………………………………………………………………………99 置村康彦

神戸大学大学院保健学研究科病態解析学領域病態代謝分野

山本大輔、中西志帆、大口広喜、山内千里、和田春香 神戸大学大学院保健学研究科病態解析学領域病態代謝分野

低出生体重のSGA性低身長児におけるGH補充療法のインスリン感受性に及ぼす影響に関する研究 ……………………103 鴨田知博

筑波大学大学院人間総合科学研究科小児科学

岩淵 敦、齋藤 誠、宮園弥生

筑波大学大学院人間総合科学研究科小児科学

野末裕紀

筑波メディカルセンター病院小児科 

双生児法を用いた周産期環境と小児期・思春期における精神機能発達との関連の検討 …………………………………109 川久保友紀

東京大学医学部附属病院精神神経科

IGF-I不応症の研究:変異IGF-I受容体遺伝子の機能解析と表現型の関連 …………………………………………………111 鞁嶋有紀

鳥取大学医学部周産期・小児医学分野

成長ホルモンの脂肪細胞に対する分化段階依存性、分子作用のメカニズムの解明 ………………………………………113 工藤正孝 菅原 明

東北大学大学院医学系研究科腎・高血圧・内分泌学分野 東北大学大学院医学系研究科先端再生生命科学

早発思春期に対する本邦の標準的性腺抑制療法が体組成に与える影響に関する研究 ……………………………………115 久保俊英

岡山医療センター小児科

グレリン受容体の機能調節機構 …………………………………………………………………………………………………117 斎藤祐見子

広島大学総合科学研究科

成長ホルモン及びグレリンが脂肪細胞の核内オーファン受容体発現を調節する機序と その生理学的意義の解明 …………………………………………………………………………………………………………119 佐藤貴弘 児島将康

久留米大学分子生命科学研究所 久留米大学分子生命科学研究所

成長ホルモン作用増強を介したグレリン併用運動療法の生理学的意義と臨床応用 ………………………………………123 椎屋智美

宮崎大学医学部内科学講座神経呼吸内分泌代謝学分野

小児血液腫瘍性疾患経験女性における骨形成ならびに骨代謝に対する 卵巣性ステロイドホルモン補充療法の効果 ……………………………………………………………………………………125 菅沼信彦

京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

亀田知美、清川加奈子

京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻

前田尚子、堀部敬三

国立病院機構名古屋医療センター小児科  

濱島 崇

あいち小児保健医療総合センター内分泌代謝科

安藤智子、古橋 円

名古屋第一日赤病院産婦人科

心の発達障害モデルマウスを用いた生化学及び栄養学的解析 ………………………………………………………………131 内匠 透

広島大学大学院医歯薬学総合研究科

先天性副腎低形成症の成因の解析 ………………………………………………………………………………………………133 田島敏広 石津 桂、中村明枝

北海道大学小児科 北海道大学小児科

矮小を特徴とする突然変異マウス(dwg)の病態解析と原因遺伝子の同定 ………………………………………………135 辻 岳人

岡山大学大学院自然科学研究科

プラダー・ウイリー症候群における重度側弯症の頻度と危険因子の検討 …………………………………………………141 永井敏郎 村上信行

獨協医科大学越谷病院小児科 獨協医科大学越谷病院小児科

小児重症成長ホルモン分泌不全症に対する成長ホルモン補充による部位別体組成変化の検討 …………………………143 長崎啓祐 小川洋平、菊池 透

新潟大学医歯学総合病院小児科 新潟大学医歯学総合病院小児科

発達障害・小児神経疾患症例におけるデカン酸修飾型グレリンの産生・分泌動態についての検討 ……………………149 西 芳寛

久留米大学医学部生理学講座

松石豊次郎、田中永一郎

久留米大学医学部生理学講座

児島将康

久留米大学分子生命科学研究所

御船弘治

久留米大学動物実験センター

脱ユビキチン化酵素によるインスリン様活性の新しい調節機構 ……………………………………………………………155 伯野史彦

東京大学大学院農学生命科学研究科

福嶋俊明、吉原英人、Cunming Duan 東京大学大学院農学生命科学研究科

骨形成不全症の予後予測に関する研究:Genotype-Phenotype−尿中骨代謝マーカーの関連性の確立 …………………161 長谷川高誠

岡山大学病院小児科

複合型下垂体ホルモン欠損症におけるLHX4遺伝子変異の頻度および変異LHX4機能解析 ………………………………165 長谷川奉延 闍木優樹

慶應義塾大学医学部小児科学教室 慶應義塾大学大学院医学研究科

転写制御因子δEF1およびSIP1のコンディショナルノックアウトマウスを用いた、 下垂体前葉細胞の分化成熟過程と成長ホルモン(GH)遺伝子の発現制御機構に関する研究 ……………………………167 東雄二郎 杉山良典、松井ふみ子

愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所周生期学部 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所周生期学部

チトクロームP450オキシドレダクターゼ(POR)欠損症の分子基盤と臨床像の解明 ……………………………………171 深見真紀 中村美智子

国立成育医療研究センター 国立成育医療研究センター

レチノイン酸による胎生期下垂体におけるGH細胞の分化調節機構に関する研究 …………………………………………177 藤原 研 屋代 隆

自治医科大学医学部解剖学講座組織学部門 自治医科大学医学部解剖学講座組織学部門

成長モルモン分泌顆粒形成に関わる新規因子の同定と解析 …………………………………………………………………183 水谷晃子

帝京平成大学

冲永寛子

帝京平成大学

松野 彰

帝京大学医学部

非カノニカルWnt経路によるFGF経路を介した長管骨伸長制御機構の解明 ………………………………………………187 山本裕之

武庫川女子大学薬学部臨床病態解析学講座

森山賢治

武庫川女子大学薬学部臨床病態解析学講座

田上哲也

京都医療センター臨床研究センター

成長ホルモン産生腺腫におけるmiRNAの解析 …………………………………………………………………………………191 吉本勝彦

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部分子薬理学分野

岩田武男、水澤典子

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部分子薬理学分野

銭 志栄、佐野壽昭

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部人体病理学分野

山田正三

虎の門病院内分泌センター間脳下垂体外科

本邦における神経線維腫症1型の成長パターン、治療効果の検討:GH過剰症例も含めて ………………………………197 依藤 亨

京都大学医学部附属病院小児科  現:大阪市立総合医療センター小児代謝内分泌内科

(五十音順)

成 育 治 療 研 究 指 定 課 題 研 究 報 告 思春期早発症の分子遺伝学的研究 ………………………………………………………………………………………………203 主任研究者

佐藤直子

(国立成育医療研究センター研究所)

堀川玲子

(国立成育医療研究センター内分泌・代謝科)

肝移植小児の成長に関する研究 …………………………………………………………………………………………………205 主任研究者

笠原群生

(国立成育医療研究センター移植外科)

上本伸二

(京都大学移植外科)

木内哲也

(名古屋大学移植外科)

猪俣裕紀洋

(熊本大学移植外科)

ヨード欠乏症関係の事業としての研究報告 インド・タミル・ナードゥ州におけるヨード充足状況の評価 ………………………………………………………………209 高村 昇

長崎大学医歯薬学総合研究科放射線疫学分野

ラオス人民民主共和国首都部の妊婦におけるヨード欠乏症と、今後の展望 ………………………………………………213 中澤裕美子

国立成育医療研究センター総合診療部 

前川貴伸、阪井裕一

国立成育医療研究センター総合診療部

Saysanasongkham Bounnack

母子保健病院(ラオス人民民主共和国)

国 際 交 流 研 究 報 告 GH/IGF-1測定の現状と未来に関するコンセンサスワークショップに参加して …………………………………………221 島津 章

国立病院機構京都医療センター臨床研究センター

公 開 シ ン ポ ジ ウ ム 「豊かな思春期への支援」

講演要旨 ……………………………………………………………………………………………………………………………225

−心の発達研究委員会企画− 養護を必要とする児童への対応 梶原隆之

文京学院大学人間学部 

思春期と環境−発達加速現象の視点− 日野林俊彦

大阪大学大学院人間科学研究科

ターナー症候群と思春期の性発達 横谷 進

国立成育医療研究センター内科系専門診療部

指 定 課 題 研 究 報 告

成長ホルモン療法の治療効果に及ぼす諸因子の解析並びに アドバース・イベントの調査に関する研究

主任研究者  長谷川奉延 (慶應義塾大学医学部小児科学教室) 共同研究者  横谷 進  (国立成育医療研究センター内科系専門診療部) 島津 章  (国立病院機構京都医療センター臨床研究センター) 田中弘之  (岡山済生会総合病院小児科) 和田尚弘  (静岡県立こども病院腎臓内科) 寺本 明  (日本医科大学脳神経外科) 永井敏郎  (獨協医科大学越谷病院小児科) 西 美和  (広島赤十字・原爆病院小児科) 羽ニ生邦彦 (羽ニ生クリニック) 堀川玲子  (国立成育医療研究センター内分泌・代謝科) 藤田敬之助 (大阪市立総合医療センター小児内科) 向井徳男  (旭川医科大学医学部小児科) 伊藤純子  (虎の門病院小児科) 藤枝憲二  (旭川医科大学医学部小児科) 田島敏広  (北海道大学医学部小児科)

本年度は、成長ホルモン療法の治療効果に及ぼす諸因子の解析並びにアドバース・イベントの調 査に関する研究のうち、次の4課題につき報告する。 1.生殖補助医療(ART)は、プラダー・ウイリー症候群(PWS)の頻度を増加させるか? (分担:永井敏郎) 2.Prader-Willi症候群における成長ホルモン治療効果 (分担:向井徳男) 3.原疾患別の慢性腎不全患児の成長ホルモン治療効果の相違 (分担:和田尚弘) 4.ターナー症候群の体格指数の検討について:ターナー症候群の新しい標準成長曲線の作成 (分担:伊藤純子)

1.生殖補助医療(ART)は、プラダー・ウイリー症候群(PWS)の頻度を増加させるか? 獨協医科大学越谷病院小児科 永井敏郎

背景 ARTは、染色体異常の頻度を増加させないとされている。しかし、最近imprinting病である Bechwith Wiedman症候群(BWS)やAngelmann症候群(AS)がARTで惹起される可能性を示唆 した報告散見される。ARTというダイナミックな操作が、imprintingという簡単な機構に影響を及

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ぼすことは容易に予想される。Imprinting病の代表であるPWSとARTの関係を検討した論文は出始 めているが、症例が少なく結論は出ていない。

目的 PWS患者でのART経由での出生頻度と機構を検討する。

対象 獨協医科大学越谷病院小児科でフォロー中の157名を対象とした。

結果 157名中12名(7.7%)がARTで出生していた。これは、日本のART経由での出生頻度1.4%に比較 して明らかに高頻度であった。12名のARTの手法は、7名がICSI、1名がIVF、1名がAID(男性 不妊)、3名が排卵誘発のみ、であった。核型は、6名が片親性ダイソミー(UOD)、4名が欠失、 1名がエピ変異、1名が父親不明のため確定できずであった。

考察 BWSやASなどのimprinting病の頻度がARTに伴い増加する理由は不明である。しかし可能性と して、ARTを行う当事者の不妊そのもの、排卵促進剤使用、胚への機械的損傷、胚の培養環境の違 い、などが推察される。今回の12例全例に関与した手技は排卵誘発であることから、今後排卵誘発 の安全性を検討する必要がある。 今回の12名の解析でUPD患者が12名中6名(50%)にまで及んでいた。一般的なPWSでのUPD 頻度は25%といわれていることからARTでは有意にUPDの頻度が増加していた。UPDの発症機構 は、母親の高年齢が関与することが知られているため、ARTで出生したPWS患者の母体年齢を検討 した。ARTで出生したPWS患者の母体年齢は40歳(36-45歳)であった。これに比較して、通常の ART患者の母体年齢は34歳(21-53歳)であり、PWS患者でARTを実施した母体年齢は有意に高か った(p=0.0037)。

結語 PWS患者で、ART経由で出生した患者頻度は高かった。ARTとPWSの関連は不明であるが排卵 促進剤の関与も否定しきれなかった。PWS患者にART経由が多かったが、これは、ARTそのもの の関与ではなく、母体高年齢の関与も考慮しておく必要がある。

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2.Prader-Willi症候群における成長ホルモン治療効果 旭川医科大学小児科 向井徳男

対象と方法 2002年から2009年において成長科学協会に登録申請されたPWS診断症例165例(男92、女73例) のうち、GH治療が行われ治療経過を把握できた97例(男57、女40例)を対象として、全例に遺伝学 的病型を決定し、GH治療開始1年から3年後の身長SDスコアを解析した。

結果 GH治療開始時の年齢は生後4か月∼16歳で、平均6.1歳であった。GH治療開始後1年目、2年目、 3年目につれてドロップアウトおよび未報告例が増えたため、身長SDスコアおよび変化量(ΔSDS スコア)を解析できたのはそれぞれ97例、55例、35例であった。図1に示すように、GH治療前の平 均SDスコア(-3.0)に対して、治療後1年目には平均SDスコア-2.34と著明に改善した。

図1

次に年齢別のGH治療の効果を検討するため、GH治療開始時の年齢を0-3歳(39例)、4-8歳 (37例)9-16歳(21例)の3群に分け、治療後1年目および2年目の治療開始前からの身長SDSス コアの変化量(ΔSDSスコア)を解析した。その結果、9-16歳の群では他の2群に比較して有意に ΔSDSスコアは低く、1年目では平均0.23、2年後は0.32であった(図2) 。

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図2

続いてPWSの遺伝学的病型を15番染色体欠失およびメチル化テストを施行し、片親性ダイソミー または刷り込み変異を示すメチル化陽性例の2群に対してGH治療の効果の差異を検討した。染色体 欠失例は71例(73%)、メチル化陽性例は26例(27%)であり、平均年齢はそれぞれ5.7歳、7.0歳で あった。結果として2群間でのGH治療後の身長SDスコアの変化には有意差はなかった(図3) 。

図3

考察 従来からの報告にあるように、PWSにおける身長SDSに対するGH治療の有用性が大規模な集約 データ解析でも明らかになった。GH治療は身長SDSの改善だけではなく、筋力向上や体組成改善、 また知能や性格にも関与する可能性があり、積極的に進められるべき治療と考えられる。 本研究では、年長児(9歳以降)における身長SDSの反応性の低下が示されたが、これは性腺機 能低下による思春期年齢における性ホルモンの関与が少ないことと関連がある可能性がある。しか し、GH治療の身長促進以外の効果も考慮すると一概にはGH治療を否定するものではない。

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遺伝学的病型による差異は少なくとも身長SDSに関してはみられなかった。欠失例、メチル化陽 性例の頻度は、従来からの頻度と一致しており、この2群間での他の要素についての比較検討が必 要と思われる。 今後は体組成変化に関する検討と糖代謝、脂質代謝への影響、側弯症などの副作用の面から解析 を進める予定である。

3.原疾患別の慢性腎不全患児の成長ホルモン治療効果の相違 静岡県立こども病院腎臓内科 和田尚弘

はじめに 慢性腎不全はその原因疾患が様々であり、透析に至るまでの治療も様々である。先天性腎疾患は 腎不全期間が長くゆっくり進行するのに対し、後天性疾患は、発症までは正常に発育し発症後より 成長障害がスタートし、また多くの治療が実施され、特にステロイド治療は成長に大きく影響する。 今回、原疾患別に成長ホルモンの効果を比較した。

対象 慢性腎不全によるGH治療のため成長科学協会に登録され、原疾患や治療歴(ステロイド剤)治療 の既往が明らかな慢性腎不全患児308名。原疾患を先天性群と後天性群に分けて検討した。先天性 群は213名、後天性群95名で、先天性群の内訳は腎低形成・異形成、アルポート症候群、先天性ネ フローゼ、多発性のう胞腎、若年性ネフロンろうなどである。後天性群は慢性糸球体腎炎、巣状分 節性糸球体硬化症、急速進行性腎炎、ループス腎炎、間質性腎炎、溶血性尿毒症症候群、腫瘍など である。

結果 先天性群の成長ホルモン治療開始時の年齢は8.7±4.3歳で、骨年齢は6.8±3.9歳、治療開始時の身 長SDSは–3.16±1.22、クレアチニンクリアランスは18.8±16.2ml/min/1.73m2であった。後天性群の 治療開始時の年齢は11.5±3.5歳、骨年齢9.2±3.3歳、治療開始時の身長SDSは−3.24±1.33、クレア チニンクリアランスは13.3±15.2ml/min/1.73m 2であった。ステロイド治療は先天性群では9名 (4%)、後天性群では27名(28%)で施行されていた。先天性群における成長ホルモン使用後の身 長SDSは治療前−3.16±1.22、1年後−3.07±1.23、2年後−3.12±1.28、3年後−3.0±1.52であった。 一方後天性群では治療前−3.24±1.33、1年後−3.09±1.27、2年後−3.0±1.04、3年後−2.73±1.13 であった。それ以上の長期治療成績は特に後天性群で10例以下と症例数が少なかった。

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結論および考察 一般的に、成長ホルモン治療は開始後1-2年の身長増加が大きく、その後徐々にその増加率は減 少し、その傾向は先天性群にみられた、さらに、慢性腎不全、特に透析期における成長ホルモン治 療効果は、catch upは困難であり腎不全による身長のさらなる成長障害の進行を食い止める程度で あると考えられており、先天性群ではその報告と同様であった。しかし、後天性群では先天性群と 比較し、治療開始後数年でも成長のcatch upが認められた。しかし、この結果が成長ホルモン以外 の効果であることも否定できない。一つは、後天性群では年齢が高く、先天性群における二次性徴 発来児は25名(11.7%)、後天性群における二次性徴発来児は23名(24.2%)であり、思春期による 成長の影響を考慮する必要がある。もう一点は、後天性群では原疾患治療でステロイドを使用して おり、ステロイド治療撤退後の成長増加の可能性がある。今回検討対象の後天性群でのステロイド 治療例の成長ホルモン使用開始前の平均身長SDは−3.69±1.65、未使用例での平均は−3.06±1.14で あるが、1年後ではそれぞれ−3.07±1.23、−3.09±1.30とステロイド治療群で急速なcatch upが見 られている。このように慢性腎不全での身長増加を検討する場合、多くの要因が影響していること から、効果判定には注意を要することが考えられた。

4.ターナー症候群の体格指数の検討について:ターナー症候群の新しい標準成長曲線の作成 虎の門病院小児科 伊藤純子分担 国立成育医療センター 磯島豪、横谷進

概要 成長科学協会に登録された成長ホルモン開始時身長・体重を用いて、ターナー症候群の新しい標 準成長曲線を作成した。結果は、Pediatrics International (2009) 51, 709-714に報告した。(P.8∼ P.13に転載した) 成長科学協会の登録データは、低身長が明らかとなった成長ホルモン治療対象者のものであるた め、低年齢ではターナー症候群の中でもより身長の低い群に偏っている。これを補正するため、国 立成育医療センターおよび虎の門病院で経過観察されていたターナー症候群の年少時の身長・体重 を用いた。 補正した新しい標準成長曲線はClinical Pediatric Endocrinologyに掲載予定である。

背景 ターナー症候群(TS)の成長評価には、疾患特異的成長曲線が不可欠であるが、現在の成長曲線 は、1955年-1989年生のデータ(中央値不明)により作成されており、身長のsecular trendを考慮す ると最近の症例には適さない。

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対象と方法 1970年以降に出生し、1991年1月−2004年12月に成長科学協会にGH治療適応判定を目的にTSと して登録された1867名と、1980年1月−2008年12月までに国立成育医療センター及び虎の門病院で TSとして経過観察されていた205名を対象とした。TSはX染色体短腕遠位側の大部分がモノソミー である細胞系列を含む核型を有するものとし、確認出来ないものは除外した。成長促進治療を受け た者、測定時に思春期が確認された、または不明の者、極端な外れ値(±5SD以上)は除外し、半 縦断的データを用いた。成長曲線の作成にはLMS法を用いた。

結果 507名(核型31名、成長促進治療264名、思春期発来144名、思春期不明14名、外れ値4名、両方 に重複登録の50名)を除外した1,565名(1970年−2006年生、中央値1985年生)の5,796測定について、 外れ値24測定を除いた5,772測定について解析し、1−20歳の成長曲線を作成した。身長、体重とも に、新旧の成長曲線の間に差を認め、secular trendによるものと考えられた。20歳時の平均身長は、 141.3 cmであり、現在の138.2cmよりも3.1cm高かった。

考案 1970年と1985年の標準成人身長(155.6cmと157.6cm)の差を考慮すると、本検討での成人身長の 差は、考えられる値であった。 GH治療が普及しているため高年齢未治療者のサンプル数の問題は 解決しがたいが、20歳における平均身長は一般集団に対して−3.30SDであり、海外からの報告 (−4.15∼−2.54)と比較しても妥当な値であった。 身長が比較的高いTS女児が低年齢では登録さ れにくいために生じたバイアスには、遡及的な半縦断的データを用いて解決が図られた。新しい成 長曲線が、臨床のレファランスとして広く利用されることが期待される。

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重症成人成長ホルモン分泌不全症患者の治療成績に関する研究

主任研究者  高野幸路 (東京大学医学部腎臓・内分泌内科) 共同研究者  置村康彦 (神戸女子大学家政学部) 田原重志 (日本医科大学脳神経外科)

背景・目的 成人成長ホルモン分泌不全症の患者においては、体組成、脂質プロファイルの変化、骨密度の低 下等の身体面での問題や生命予後の悪化が引き起こされることが明らかになっており、成長ホルモ ンの生理量の補充により身体的障害とともに、生命予後の悪化も改善することが証明された(1,2)。 成長ホルモン補充療法が承認される際にこれらの効果が明らかになった。しかしながら、成長ホル モン分泌不全症の患者においては、これらの身体面での問題以外に、社会心理的な問題も起こるこ とが明らかになっており、心理社会的障害、身体的障害の二つの面においてQOLの著しい低下が起 こることがおもに欧米からの報告によって証明されている。このQOLの低下は患者を苦しめるが、 成長ホルモン補充療法は、QOL についても改善をもたらすことが欧米からの複数の報告で示され ている。 わが国においても第3相の臨床試験が複数行われた。重症成人成長ホルモン分泌不全症患者にた いして、成長ホルモン補充療法が体組成、脂質プロファイルの改善をもたらすことが示され、承認 されるに至った。2007年以来、わが国でも多くの患者が補充療法の恩恵に浴するようになってきて いる。しかしながらこれらの第3相臨床試験では、体組成、脂質プロファイルに対する良好な効果 が認められたものの、QOLの改善については有意な効果を証明することができなかった。これは、 欧米からの成績と異なっており、また日常臨床における本邦の医師の経験とも異なる結果である。 成長ホルモン補充療法を受けている患者の報告や、主治医の観察から、多くの患者さんで有意な生 活の質の改善が示されている。また、実臨床においてQOLの改善は患者の治療継続の重要な動機に なっている。日本の重症成人成長ホルモン分泌不全症の患者において成長ホルモン補充療法がQOL の改善をもたらすのかを客観的に示すことができるかどうかは、今後より多くの患者が成長ホルモ ン補充の恩恵を受けることになるか否かを左右する重要な問題である。 欧米での成績や本邦の実臨床での体験に反して、日本の第3相臨床試験で補充療法によるQOLの 改善が認められなかった原因として、いくつかの可能性が考えられている。欧米で開発され、承認 のための複数の治験で用いられたQol-AGDAやSF-36などのQOL質問紙が、日本人の表現特性にあ っておらず、QOL改善効果を捉えられていない可能性や、これらの質問紙が本来疾患特異性に乏し い可能性などである。このような考えに基づき、日本人の間脳下垂体疾患患者のQOLを、疾患特異 に感度良く捉えるために(J)AHQ質問表が開発された。本研究では、このAHQ質問表を用いて日 本人の成人成長ホルモン分泌不全症(重症型)の患者さんのQOLを成長ホルモン補充療法前後で調 べ、治療前の状態の評価を行うとともに、補充療法によるQOLの改善が観察されるかを明らかにす るものである。なお、(J)AHQとして開発されているQOL質問表の名称変更(AHQ)にあわせ、

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本報告書においてはAHQと表記している。 これらの成果をふまえ、本研究では重症成人成長ホルモン分泌不全症の患者さんに(J)AHQ質 問紙に答えていただき、QOL低下が認められるかをまず解析した。次に、成長ホルモン補充を受け た患者さんに対し治療前と治療後3∼6ヶ月に(J)AHQ質問紙表を答えていただき、QOLに有意 の変化が認められるかを明らかにした。またこの結果を、治療を受けていない患者さんにおける QOLの経時変化と比較することとした。

対象・方法 研究は、各施設の倫理委員会での承認を得て行った。アンケート調査の施行と利用は患者さんか ら書面によるインフォームドコンセントを得たうえで行った。対象は、下垂体機能低下症の確定診 断がなされている合計97名で、この中に成人成長ホルモン分泌不全症であることがGHRP負荷試験 で証明された例が30名、成長ホルモン分泌不全のない症例が67名であった。これらの患者に対し AHQ質問紙を用いたQOLアンケートを行った。成長ホルモン補充療法を受けた患者7名について。 治療前後のQOLスコアを比較した。成長ホルモン補充療法を受けていない患者さん10名について、 6ヶ月の間隔をおいてAHQ質問紙に回答を求め前後のQOLスコアを比較した。 アンケートは、外来受診時にアンケート用紙を手渡し数日以内に記入、事務局に郵送することで 行った。 AHQには、心理・社会関連領域と症状関連領域の2つの主要領域があり、この下に下位領域が存 在する。 検定には主要2領域の変化、下位領域の変化ともにウィルコクソンの符号付順位検定を用いた。

結果 1.重症成長ホルモン分泌不全の有無によるQOLの差 AHQ質問紙を用いたQOLについて、重症成長ホルモン分泌不全の有無によってQOLに差が認め られるかを検定した。重症成長ホルモン分泌不全を認める30例では心理・社会領域で119.1±30.7で あり、症状領域では151.7±36.1であり、重症GH分泌不全を認めない67例については心理・社会領域 で110.8±46.6であり、症状領域では139.7±43.9であった(図1)。重症成長ホルモン分泌不全のある 症例の方がQOL scoreが全体として低かったが有意差は認めなかった。

2.成長ホルモン補充療法を受けた重症成長ホルモン分泌不全患者におけるAHQの主要2領域の変化 AHQの主要2領域について治療前後を調べた。心理・社会関連領域について、治療前は91.3± 44.3治療後は143.3±27.8で治療前後の変化量は52.0±12.8と有意で大きな改善を認めた。症状関連で は、治療前が126.1±80.1治療後は169.7±48.1で治療前後の変化量は43.6±11.4とこれも有意で大きい 改善を認めた。少数例においてもこのような有意差を示したことから、AHQによるQOL評価表が 日本人の成人成長ホルモン分泌不全症のQOLと治療による変化を評価するのに有効であることが示 された(図2)。

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3.心理・社会関連領域で想定される下位領域の変化 下位領域として、うつ気分、社会活動の制限、気力、日常生活・睡眠、将来・治療への不安が分 けられているが、これらの詳細をみると、うつ気分で治療前が24.6±13.3、治療後が39.1±9.7、社会 活動の制限で治療前が23.6±14.6、治療後が36.1±4.8、気力で治療前が11.1±7.5、治療後が20.0±8.7、 日常生活・睡眠で治療前が15.7±10.0、治療後が27.4±9.5、将来・治療への不安で治療前が16.4±6.2、 治療後が20.6±5.9といずれの下位領域においても有意な改善を認めた(図3) 。

4.症状関連で想定される下位領域の変化 下位領域として、体温調節、全般(ACTH)、視床下部障害、尿量調節、皮膚・毛髪、体重、性 的関心が分けられているが、これらの詳細をみると、体温調節で治療前が25.1±15.0、治療後が 31.6±12.5、全般(ACTH)で治療前が20.4±12.4、治療後が30.0±7.4、視床下部障害で治療前が 26.1±10.4、治療後が37.4±6.5、尿量調節で治療前が16.9±6.9、治療後が18.1±6.0、皮膚・毛髪で治 療前が20.4±12.1、治療後が27.3±8.4、体重で治療前が10.9±6.4、治療後が16.9±11.0、性的関心で 治療前が6.3±4.1、治療後が8.4±3.0と体重、性的関心以外の多くの下位領域において有意な改善を 認めた(図4)。

5.成長ホルモン補充療法を受けていない重症成長ホルモン分泌不全患者における6ヶ月間隔前後 でのAHQの変化 AHQの主要2領域の変化 成長ホルモン補充療法を受けた患者において治療前後にQOLの改善が得られることが明らかにな ったが、これが偶発的に起こりうるものであるかを明らかにするために、同程度の数の成長ホルモ ンを受けなかった重症成人成長ホルモン分泌不全症の患者において同程度の期間をおいて2回QOL 調査を行い、QOLの変動が大きく生じうるかを検討した(図5) 。 AHQの主要2領域について変動を調べた。心理・社会関連領域について、治療前は79.0±15.1治 療後は75.7±14.6でQOLに有意な変化は認めなかった。症状関連では、治療前が78.4±12.2治療後は 72.7±14.1でQOLに有意な変化は認めなかった。時間経過による変化率はQOLが低下する方向であ った。

心理・社会関連領域で想定される下位領域の変化 図6に示すように心理・社会関連領域で想定される下位領域についても、社会活動の制限が時間 経過とともに低下している以外には有意な変化は観察されなかった。

症状関連で想定される下位領域の変化 図7に示すように症状関連で想定される下位領域についても、体重の項目でQOLの低下が認めら れた以外は有意な変化は観察されなかった。

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考察 本研究において成長ホルモン治療前後でQOLの評価が可能であったのは少数例であったが、少数 例であったにもかかわらずこのような有意差が認められた。このことは日本人の成人成長ホルモン 分泌不全症のQOL評価とその成長ホルモン補充療法による変化を評価する上で、AHQ評価表によ るQOL評価が有効であることを示唆している。心理・社会関連領域と症状関連領域の二つと、それ らの下位領域においてもほとんどの領域おいて有意で大きい改善を認めた。これまでの、QOLAGHDAやSF-36で評価できなかった成長ホルモン補充療法によるQOLの改善をあきらかにできた ことは重要な結果である。 一方で重症成長ホルモン分泌不全の有無でQOL scoreを比較すると成長ホルモン分泌不全のある 場合のほうがQOL scoreが低いものの有意差は認められなかった。この点については、重症成長ホ ルモン分泌不全の患者がQOL低下状態に慣れているためにQOLの低下を自覚できていない可能性を 示唆するものであり、今後の検討が必要である。 今回の報告では成長ホルモン補充によるQOL改善が偶発的に起こりうるものであるかを明らかに するために、同程度の数の成長ホルモンを受けなかった重症成人成長ホルモン分泌不全症の患者に おいて同程度の期間をおいて2回QOL調査を行い、QOLの変動が大きく生じうるかを検討した。そ の結果、未治療患者では期間をあけて行った2回の質問において、有意な変化は認められず、変化 量は経時的にQOLが低下する方向に変動する場合が多かった。この結果から、成長ホルモン治療に よるQOL改善は偶発的な現象ではないと考えられた。

図1 重症成長ホルモン分泌不全の有無によるQOLの差

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図2 成長ホルモン治療前後の主要2領域の変化

図3 心理・社会関連領域で想定される下位領域の変化

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図4 症状関連で想定される下位領域の変化

図5 未治療患者のQOLの変動

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図6 未治療患者の心理・社会関連領域で想定される下位領域の変動

図7 未治療患者の症状関連で想定される下位領域の変動

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成長ホルモン(GH)および関連因子の測定に関する研究

主任研究者

島津 章

(国立病院機構京都医療センター)

共同研究者

立花克彦

(日本ケミカルリサーチ株式会社)

勝又規行

(国立成育医療研究センター研究所)

肥塚直美

(東京女子医科大学内分泌センター内科)

横谷 進

(国立成育医療研究センター)

圭太

顧 問

(大阪大学大学院医学系研究科)

堀川玲子

(国立成育医療研究センター)

藤枝憲二

(旭川医科大学小児科)

田中敏章

(たなか成長クリニック)

はじめに 成長ホルモン(GH)と関連因子であるインスリン様成長因子-Ⅰ(IGF-Ⅰ)の測定はGH分泌異常 症の診断と治療に必須であり、視床下部・下垂体機能の指標の一つとしても用いられる。従来、放 射性同位元素(RI)を用いたポリクローナル抗体による競合型免疫測定法(ラジオイムノアッセ イ:RIA)であったが、モノクローナル抗体による捕捉抗体と標識抗体によるサンドイッチ型の非 RI免疫測定法が主流となり、測定時間の短縮・検体量の少量化・測定感度にすぐれた全自動測定キッ トが数多く開発された。しかし、測定キットにより測定値のバラツキが問題となり、その対策とし て成長科学協会GH・関連因子測定検討専門委員会による測定値補正式の作成、リコンビナントGH の較正標品の導入による測定値の標準化が行われた。

1.GH測定キット間差に関する研究 本年度、GH/IGF-1測定キットの日本における動向では、2社(栄研化学株式会社、協和メディッ クス株式会社)が撤退することになった。現在、GH測定キットは、GHキット「第一」(株式会社テ イエフビー)、ST Eテスト「TOSOH」ⅡHGH(東ソー株式会社)、Access GH(ベックマン・コー ルター株式会社)、シーメンス・イムライズGHⅡ2000(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティ クス株式会社)の4社、IGF-Ⅰ測定キットは、IGF-Ⅰ(ソマトメジンC)IRMA「第一」(テイエフ ビー株式会社)、ソマトメジンC・Ⅱ「シーメンス」(シーメンスヘルスケア・ダイアグノスティク ス株式会社)の2社である。 そこで、現在流通しているGH測定キットのメーカーに協力を依頼し、測定値標準化後のキット間 差について各測定キットによる同一検体の測定を行う調査を開始した。健常者6名の負荷試験検体 合計30検体を収集した。現在、キット間差はまだ残っているという予備的データが得られている。 今後、免疫学的測定法で避けられない抗体の親和性・特異性やマトリックス効果などがどのように 原因しているかなど、検討を加えたい。

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2.国際的なGH/IGF-Ⅰ測定標準化 IFCC(International Federation of Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)認証の下、 GH測定に関する国際ワーキンググループ(WG)が、Bidlingmaier教授をWG長として形成された。 その活動の一環として、2009年10月15日∼17日、米国バージニア州シャーロッテスビレのケスウィッ ク ホ ー ル で 、 Growth Hormone Research Society( GRS) が 音 頭 を と り 、 国 際 化 学 連 合 (International Federation for Clinical Chemistry and Laboratory Medicine(IFCC) 、International Society for IGF ResearchとPituitary Societyが共同し、欧州、米国、豪州、日本から内分泌分野、 臨床化学分野、測定キットメーカー、行政の専門家約50名が一同に会して、GHおよびIGF-Ⅰ測定の 国際的協調のため、なすべきことの定義、戦略、実施に関するコンセンサス会議が開催された。会 議の概要については、国際協力研究助成報告1)に記載した。 GHの国際標準品はIS 98/574を、IGF-Ⅰの国際標準品はIS 02/254(Bruns C, et al. GH IGF Res 2009; 19(5): 457-462)を用いる。測定法に関する情報開示、精度管理などが議論され、今後、ヒ トコントロールプール血清の作成や基準範囲設定に関する国際協力・協調が必要であると共通認識 された。

3.臨床現場におけるGH・IGF-Ⅰ測定キット内およびキット間差 昨年度に引き続き、第30回イムノアッセイ検査全国コントロールサーベイ成績報告(2008年)2) が、報告された。GH測定に関して参加施設は25で、RI法は11施設 GHキット「第一」とAbビーズ HGH“栄研”が、non−RI法は14施設 ST Eテスト「TOSOH」(HGH)、アクセスhGH、DPC・イ ムライズGHが使用されていた。キット内CV%は、試料1(低濃度域)がRI法で8.9%、non−RI法 では8.2%であった。試料2(高濃度域)は各々7.6%と6.6%であった。キット間CV%は試料1が 10.3%、試料2は17.0%であった。キット間の最大値と最小値の比は試料1で1.39、試料2で1.49で あり、昨年度より改善がみられた。 IGF-Ⅰ測定に関しては、参加施設は10でソマトメジンC・Ⅱ「シーメンス」とIGF-Ⅰ(ソマトメ ジンC)IRMA「第一」が使用されていた。キット内CV%は試料1および2でそれぞれ4.4%、5.9% であった。キット間の最大値と最小値の比は試料1で1.01、試料2で1.07と互換性は改善されていた。 臨床現場ではキット間差はほぼ解消されていると考えられる。しかし測定法そのものに内包され る系統的な差異について検討していく必要がある。

参考文献 1.島津 章:GH/IGF-1測定の現状と未来に関するコンセンサスワークショップに参加して、成長 科学協会年報 2009年度 2.第 3 0 回 イ ム ノ ア ッ セ イ 検 査 全 国 コ ン ト ロ ー ル サ ー ベ イ 成 績 報 告 要 旨 ( 2 0 0 8 年 ). RADIOISOTOPES 2009; 58(10): 655-708.

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ヨウ素摂取と妊婦及びその出生児の甲状腺機能に関する臨床的研究 1.周産期の母体のヨウ素摂取と新生児の甲状腺機能との関連について(中間報告) 2.ヨウ素含有造影剤の母体、胎児の甲状腺機能への影響についての横断的研究(最終報告)

研究責任者  布施養善 (国立成育医療研究センター研究所、サヴァイクリニック) 共同研究者  小川博康 (小川クリニック) 布施養慈 (仲町台レディースクリニック) 荒田尚子、原田正平 (国立成育医療研究センター)

研究の背景 ヨウ素は人体に必須の微量元素の一つで甲状腺ホルモンの主要な構成要素であり、ヨウ素の欠乏 および過剰はともに甲状腺機能の異常を主徴とする様々な疾患の原因となる。ヨウ素はそのほとん どが食品から摂取されるが、わが国では古来より海藻類、魚類を日常的に摂取する習慣から一部の 地域を除いてヨウ素欠乏症は存在しないと考えられている。近年、多くの加工食品に海藻類から製 造した風味原料が添加され、また食品以外にも医薬品などにヨウ素が多く含まれるものがあり、ヨ ウ素が過剰に摂取されている可能性が推測されるが、妊産婦、新生児にどのような影響があるかは 明らかではなく、日本人の至適摂取量も定まっていない。 胎児の発育、発達、特に中枢神経系の発達には、妊娠初期から甲状腺ホルモンが不可欠であり、 妊娠中の母胎のヨウ素欠乏は特にヨウ素欠乏地域においては児に重篤な精神発達障害をもたらすこ とが知られている一方、食品あるいはヨウ素を含む医薬品による母胎へのヨウ素負荷によると考え られる新生児の一過性の甲状腺機能異常も報告されている。しかし妊娠中の母体の甲状腺機能とヨ ウ素代謝との関連については不明な点が多く、特に新生児のヨウ素代謝への影響についてはほとん ど報告がない。

研究目的 周産期の食品からのヨウ素摂取が母体・胎児・新生児の甲状腺機能に及ぼす影響を明らかにす る。

研究計画 対象と方法:妊娠36週以降の甲状腺疾患のない妊婦およびその新生児100組、縦断的研究、 当初の計画をやや修正した。 ①母体のヨウ素摂取量調査(質問紙法による食物摂取頻度調査):妊娠36週前後の研究へのエント リー時、分娩後5−6日目の退院時、産後1ヶ月検診時の3回。入院期間(約5日間)中の食事内 容から実際に摂取したヨウ素量を計算する。 ②母体の尿中ヨウ素濃度の測定:妊娠36週前後と分娩後3日目前後、産後1ヶ月検診時の3回 ③母体の血清TSH,FT4,甲状腺自己抗体の測定:妊娠36週前後と分娩後3日目前後の3回

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④新生児の尿中ヨウ素濃度の測定:初回排尿、生後5日目前後の退院時、生後一ヶ月検診時の3回 ⑤新生児の血中TSH濃度を測定する(先天代謝異常スクリーニング時) ⑥母乳中のヨウ素濃度の測定:分娩後3日目前後

本年度までの研究経過と今後の予定 平成16−19年度の指定課題研究において、次のことを明らかにした。 1.一般に市販されている加工食品19品目、368点についてヨウ素濃度を測定し、明らかにした。 2.この結果を用いて、食物からのヨウ素摂取量を推定するための食物摂取頻度調査法を開発した。 3.約800例の妊婦とその新生児を対象に、尿中ヨウ素濃度、ヨウ素摂取量、血清TSH,FT4,甲状腺 自己抗体を測定し、妊娠に伴う尿中ヨウ素排泄量の変化、ヨウ素摂取量と血清TSH,FT4,甲状腺 自己抗体との関連を明らかにした。 4.妊娠後期のヨウ素摂取量と尿中ヨウ素濃度が早期新生児期の新生児TSH値と正の相関を示した。 これらの結果をふまえ、平成20−21年度の研究課題「1.周産期の母体のヨウ素摂取と新生児の 甲状腺機能との関連について」は神奈川県横浜市内の小川クリニックおよび仲町台レデースクリニ ックにおいて分娩予定の妊婦のうち、同意を得られた症例の研究計画へのエントリーを開始し、妊 産婦および新生児の血液、尿、乳汁の検体を保存し、予定症例数に達した時点でヨウ素濃度を測定 し、統計学的検討をおこなう予定である。

研究課題「2.ヨウ素含有造影剤の母体、胎児の甲状腺機能への影響についての横断的研究(担 当:荒田尚子、原田正平)」については最終報告とする。

参考文献 1.布施養善ほか(2010):市販の加工食品に含まれるヨウ素量と日本人のヨウ素摂取量について、 日本臨床栄養学会雑誌(投稿中) 2.布施養善ほか(2010):食物からのヨウ素摂取量算出のための食事調査法の開発と妥当性の検 討、日本臨床栄養学会雑誌(投稿中) 3.布施養善ほか(2009):妊娠・分娩・産褥期のヨウ素代謝の変化と甲状腺機能に関する臨床的 研究、第52回日本甲状腺学会、名古屋 4.FUSE Y. et. al(2010) : Iodine status of Japanese pregnant women: reference values for spot urine iodine concentrations in iodine-sufficient region. 14th International Thyroid Congress, Paris(発表予定)

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油性ヨウ素含有造影剤による子宮卵管造影検査後のヨウ素代謝と 甲状腺機能へ与える影響に関する前向き研究

分担者  荒田尚子 原田正平

研究要旨 油性ヨウ素含有造影剤による子宮卵管造影(HSG)が、成人女性のヨウ素代謝、甲状腺機能に与 える影響について検討した。甲状腺疾患の既往のない20名では、HSG後に甲状腺機能低下症傾向を 示し、高濃度ヨウ素曝露が24週以上継続することが示された。血清遊離ヨウ素増加に伴い、サイロ グロブリン値が増加し、4週から8週時にFT3はわずかに低下、TSH値は4∼24週後に高値となり、 FT4を維持した。さらに1年後に追跡できた11例において、1年後には高濃度ヨウ素環境は改善さ れ、甲状腺機能も元のレベルに回復することが示された。甲状腺疾患の既往の有無にかかわらず、 成人女性において、油性ヨウ素含有造影剤によるHSGの後最低半年間はヨウ素過剰に伴う、潜在性 甲状腺機能低下症発症の恐れがあり、検査後数カ月は甲状腺機能に留意し、食事からのヨウ素摂取 を制限するなどの対策が必要と考えられた。

研究分担者 荒田尚子(独立法人国立成育医療研究センター母性医療診療部代謝内分泌内科・同センター内 妊娠と薬情報センター) 原田正平(独立法人国立成育医療研究センター研究所成育医療政策科学研究室)

研究協力者 原田正平(独立法人国立成育医療研究センター研究所成育医療政策科学研究室) 齊藤秀和(独立法人国立成育医療研究センター母性医療診療部不妊診療科) 齊藤隆和(独立法人国立成育医療研究センター母性医療診療部不妊診療科) 入江聖子(独立法人国立成育医療研究センター内妊娠と薬情報センター) 村島温子(独立法人国立成育医療研究センター母性医療診療部・ 同センター内妊娠と薬情報センター) 布施養善(独立法人国立成育医療研究センター研究所共同研究員、サヴァイクリニック) 大橋俊則(日立化成工業株式会社ライフサイエンス部門)

A.研究背景 近年、生殖補助医療により誕生した新生児数は増加を示し、妊娠前の子宮卵管造影 (Hysterosalpingography(HSG))検査時の油性造影剤投与がヨウ素過剰による母児の甲状腺機能 異常の原因になることがある。不妊症の検査としてHSG検査はほぼ必須であるが、妊娠率の改善を 期待されて油性造影剤(リピオドール®)を選択されることが多い(1)。リピオドール®は1mlあた

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り480mgのヨウ素を含み、約5∼10ccすなわちヨウ素2.4gから4.8gが一度の検査で使用されるが、油 性造影剤であるためにその一部が骨盤内に長期にとどまり、検査後約2年たっても血清非ホルモン ヨウ素が高値を示すといわれている(2)。いっぽう、妊娠初期の母体の甲状腺機能低下は妊娠の転 帰に悪影響を及ぼし、児の精神運動発達にも影響を及ぼす可能性がいわれている(3, 4)。さらに妊 婦のヨウ素過剰状態は胎児や新生児の甲状腺機能低下を引き起こす報告もあり(5, 6)、HSG後の妊 娠が児の精神運動発達に多大な影響をもたらす可能性を示しており、重要な問題と考えられる。今 回は、HSG後の体内残留ヨウ素の甲状腺機能への影響について明らかにした。

B.研究方法 1.対象 国立成育医療センター不妊外来を受診した甲状腺疾患の既往のない女性のうち、HSGを施行予定 の26名を対象とした。髄腔造影や半年以内の胆嚢造影検査後の症例、かつて両側卵管閉塞を指摘さ れたことのある症例は対象から除外した。 2.方法 HSG試行前に血中FT3、FT4、TSH、サイログロブリン(Tg)、抗Tg抗体、抗TPO抗体を測定し た。 ヨウ素含有食品およびヨウ素含有薬剤の摂取状況、子宮卵管造影検査の既往、甲状腺疾患家族歴 について聞き取り調査を造影検査前に行い、油性造影剤(ヨウ素含有量4,800mg/10ml)を使用し HSGを施行した。 まず、4例においてHSG前、1、2、4、8、12w後の尿中ヨウ素クレアチニン換算値の推移を検 討し、尿中ヨウ素クレアチニン換算値の頂値が約4∼12週であることを確認した後に、HSG施行後 4、8、12、24週時、12カ月時にFT3、FT4、TSH、Tg、血中ヨウ素濃度、尿中ヨウ素濃度(クレ アチニン換算)を測定した。

(倫理面への配慮) 本研究で実施するヒトを対象とした研究については次の研究課題名として、国立成育医療センター 倫理委員会で審査を受けて承認を受けている。 子宮卵管造影検査後のヨウ素代謝と甲状腺機能への影響に関する前向き研究(受付番号258) 。

C.研究結果 I. HSG施行後12週までのパイロット研究 まず、4例においてHSG前、1、2、4、8、12w後の尿中ヨウ素クレアチニン換算値の推移を検 討した。尿中ヨウ素クレアチニン換算値平均値は886±1322.93(SD)μg/gCrtから、HSG後徐々 に増加し、4週から12週に前値に比較して有意な増加を示した。HSG後8wに頂値8067.5±3623.878 μg/gCrtとなり、12w時点でも前値に比較して有意に高値を示した(6495±2462μg/gCrt)(図 1)。

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II. HSG施行後24週までの経過 対象者26名のうち、HSG施行後24週まで経過を追えた20例(表1)について、解析を行った。 年齢は平均36.5±3.3歳(28∼42歳)、6例でTg抗体陽性、5例でTPO抗体陽性、いずれかが陽性 は7例であった。 1.血清ヨウ素濃度および尿中ヨウ素クレアチニン換算値の推移 HSG後の血清遊離ヨウ素はHSG前38.3±41.8(平均±SD)μg/LからHSG後4週時に196.1±112.1 μg/Lと頂値に達し、その後徐々に低下したが、24週の時点で77.5±56.6とHSG前値に比較して依 然として有意に高値を示した(図2)。同様に、尿中ヨウ素クレアチニン換算値もHSG前1244± 2530μg/gCrt からHSG後4週時に8163.5±4933.8μg/gCrt、8週時に6543±3172μg/gCrtと頂 値に達し、その後徐々に低下したが、24週の時点で3396.5±1846μg/gCrtとHSG前値に比較して依 然として有意に高値を示した(図2)。 2.甲状腺機能の推移 造影検査前、造影後4週、8週、12週、24週の甲状腺機能の推移を図3、4に示す。 FT3値は検査前が2.83±0.59 pg/ml(平均±SD)、造影前後4から8週にかけて、有意に低下し (2.73±0.30⇒2.54±0.28pg/ml:p<0.01)、その後、やや上昇し、24週時には2.62±0.29 pg/mlであ った。FT4値は検査前が1.25±0.38ng/dlであり、造影後はやや低値をとったが、有意差は認めなか った。HSG後のTSH値はHSG前1.50±0.70(平均±SD)μIU/mLからHSG後4週、8週、12週時 に頂値(12週時:3.12±2.79μIU/mL)に達し、24週の時点で2.34±1.32μIU/mLと低下を示した が、HSG前値に比較して依然として有意に高値であった(p
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